表題番号:1998A-901 日付:2002/02/25
研究課題レーザー・RF間の高精度同期システムの基礎研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学総合研究センター 教授 鷲尾 方一
研究成果概要
超高速物理化学反応の解明は、新物質の創世や反応の制御、物質中での欠陥生成の総合的な理解等の面で非常に重要である。パルスラジオリシス法はこのような物理化学反応の基礎過程解明の有力な武器として知られているが、現状では反応の本質を議論するレベルにない。近年のパルスラジオリシスシステムでは、ポンプ源としてRF加速された電子、プローブとしてレーザーを用いている。基本的にレーザーー電子ビーム間の時間揺らぎは、レーザー光によって電子を発生させると同時に、電子発生に用いたレーザー光をプローブに利用することにより非常に小さくする事ができるはずである。しかし、過去の実験例では、この方式を用いても十分な精度が得られなかった。<BR>本研究では、このシステムのにおける同期及び時間分解能制御の基礎的な研究を実施し、以下に挙げるような成果を挙げた。 RF光電子銃から取り出される電子のバンチ長さ、エミッタンス、エネルギー分散はレーザー光のRF位相への入射タイミング及びレーザービームサイズにより大きく変化する。本研究成果からパルスラジオリシス実験を実施するための、詳細な条件を決定する事ができた。<BR>1.数ピコ秒程度の時間分解能を得る場合には、従来のシステムで実施可能であるが、レーザー光のパルス長を5ps程度とするとともに、RFへの入射位相を最大加速位相より20度程度を早いタイミングで入射する。このようにする事により、適切なバンチ長さの電子が得られ、しかも電子のエネルギーゲインも十分となり、精度の良い実験が可能となる。<BR>2.更に進めて1ピコ秒程度の時間分解能を得るためには、新しいシステムの導入が必要である事が分かった。この方式は、RF光電子銃の後段にエネルギー選別をしながら加速が可能なレーストラック型のマイクロトロンを設置するもので、このようにする事により、約1psの電子パルスを非常に狭いエネルギー分散で取り出す事ができる事を見出した。これにより、レーザー光と高度に同期した形で電子ビームを取り出す事が可能となる。なおこの方式の高度化により、加速電子とレーザー光の衝突による、フェムト秒X線パルスの発生も視野に入ってきており、更に進んだシステム開発の基礎を確立する事ができた。