表題番号:1998A-883 日付:2002/02/25
研究課題ネットワーク型産業における規制緩和の経済分析-ネットワークの構造分析を中心に-
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 助教授 土門 晃二
研究成果概要
本研究では、規制緩和によって発生したネットワークの接続問題について、最近の議論を整理しながら問題点を探った。
最初に、効率的要素価格ルール(ECPR)について議論を整理して、この価格ルールの持つと主張されている利点が、非常に厳しい条件下でしか成立しないことを示した。その条件とは、費用関数の線形性と参入後と参入以前の市場価格の変化についてである。また、製品差別下のもとでのECPRは、その解釈にかなりの無理があることを示した。
次に、新規参入企業のネットワークの構築が進んだ場合の水平的な接続について、考察を行った。水平的な接続では、企業の提携・合併を引き起こす可能性があるが、それは製品差別化の程度に大きく依存していることを説明した。すなわち、製品差別化の程度が小さい場合には、市場を掌握しようとするインセンティブが各企業に働き、提携・合併の可能性は低くなるということである。
次に、垂直的な統合および分離についての効果について扱った。この効果は、系列と範囲の経済という概念を使うことによって整理されている。分離が効果を発するのは、その系列と範囲の経済の効果が分離によって生じる二重マークアップの弊害を上回るほどの大きい場合である。
最後に、国際通信網の接続問題を考察した。この問題は、国際的な実行力を持つ規制当局がいないという点で、国内問題以上に解決が難しいものである。最初に、非対称的な国の間で生じる問題を指摘し、その解決方法である自発的補助金政策について説明を行った。
以上の考察は、ネットワーク構造の違いが、どのように接続の問題を複雑なものにしているかという点を説明しており、その統一的なサーベイによって今後の研究にとっての重要なステップになることが期待される。