表題番号:1998A-872 日付:2002/02/25
研究課題フロン系冷媒を用いない新冷凍システム(波動冷凍法)に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助手 納富 信
研究成果概要
波動冷凍法とは,動作流体の圧力変動によって発生する温度変動を利用した冷凍法を言う.この冷凍法は,最近のフロン系冷媒に対する様々な規制から,次世代の冷凍法の主流となると考えられているノンフロン冷凍システムの一翼を担う可能性が高く,広範囲に亘って様々な研究が行われている.波動冷凍法の特長は,構造が比較的簡単であることや低圧力での運転が可能なこと,コスト面での優位性などが挙げられている.
1998年度研究課題では,システム内に機械的可動部が存在しない冷凍システムである,熱駆動型熱音響冷凍機の研究を中心に行い,特に設計手法が経験に依存していた点に注目し,最適設計手法の確立を目的として研究を遂行した.既にそれまでの研究で,冷凍発生部である冷凍機と圧力波発振源である発振器についてそれぞれ単体での性能試験は行われ,最適形状設計に関するある程度の指針が得られていることから,1998年度は熱音響冷凍機と熱駆動発振器を組み合わせた熱駆動型熱音響冷凍システムについての検討を行った.このシステムは装置内に機械的可動部が無いことから,信頼性が高く,長寿命・低振動であるという特長を持っている.将来的な応用として,たとえば保守が不要な状況下での冷却システムや駆動源が熱であることから諸排熱を有効に利用するシステムの一部,また自然エネルギーである地熱や太陽光エネルギーの利用も考えられている.
冷凍機・発振器がそれぞれ最大熱輸送量・最大出力を発生する条件は,装置本体の形状に大きく依存することから,冷凍機と発振器に関して,構成要素の幾何形状をパラメータとして変化させて性能への影響を評価した.その結果,最高性能を発揮する条件では,中間蓄熱媒体であるスタックの伝熱面積と音響共鳴管体積との間に一意性が存在することを確かめた.今後の課題は,未解明な部分が多い熱輸送メカニズムを明確化することと,その理論的な検証である.