表題番号:1998A-854 日付:2002/02/25
研究課題誤り訂正符号の軟判定復号法に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助手 小林 学
研究成果概要
本研究では情報通信の高信頼化を実現する誤り訂正符号に対する復号法の高速化,高信頼化を目的としている.誤り訂正符号の復号は,通信路情報を有効に利用する軟判定復号法と,通信路情報を0,1としか扱わない硬判定復号法に大別される.前者の中でも,硬判定復号法の一種であり計算量の少ない限界距離復号法を,複数回用いる軟判定復号法は数多く提案されており,Chase復号法,TK復号法,KNH復号法はその代表的な手法である.これらの復号法の多くは漸近的に,最も復号誤り確率の小さい最ゆう復号法を達成するが,多くの計算量を要するという欠点をあわせ持つ.
 一方,限界距離復号法では通常訂正不可能となるある種の誤りを,効果的に訂正する硬判定復号法(限界距離を超える復号法と呼ぶ)が従来提案されている.著者はこの復号法を効率化する手法を提案し,さらにその優れた特性を利用してこれを軟判定復号法へ効果的に応用した.その結果上で述べた従来の軟判定復号法より復号誤り確率・計算量を大幅に低減することができることを示した.
 また限界距離復号法は0, 1の通信路情報を用いて基本方程式と呼ばれる連立方程式を高速に解くことにより行われる.従来の軟判定復号法は,この限界距離復号法をおのおの独立に複数回用いるため,復号にかかる計算量は限界距離復号回数に比例する.これに対し本研究では,(1)おのおのの限界距離復号法において得られる基本方程式間の関係の導出し,(2)以前行った限界距離復号法の結果(基本方程式の解)から次に行う限界距離復号法の結果を直接求めるアルゴリズムを導出した.(3)さらにこのアルゴリズムを用いた効果的な軟判定復号法を提案した.また,提案した軟判定復号法に要する計算量及び復号誤り確率を解析し,その結果計算量・復号誤り確率が従来手法より大幅に改善されることを示した.