表題番号:1998A-842 日付:2005/10/25
研究課題超離散化手法の交通流への対応
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 高橋 大輔
研究成果概要
超離散化手法とは、従属変数が連続で独立変数が離散的な差分方程式に対してある極限操作を行うことにより、従属変数をも離散化して全変数離散のセルオートマトン(以降CA)を得る手続きのことである。またこの操作を逆に適用することによりCAから差分方程式を得ることもできる。この手法の特徴は元の系の数学的構造を壊すことなく系を離散化・連続化できることであり、他の近似的な手法と際だって異なるすぐれた特徴を有する。
 本研究においては交通流の渋滞形成のシミュレーションモデルに対して超離散化手法の応用を行った。まず、空間サイト2近傍から次の時刻の状態を決定するルール番号184のCA(CA184)がシミュレーションモデルのベースとしてしばしば用いられているので、これに超離散化手法を適用し解析を行った。その結果CA184は、流体力学において衝撃波の解析に用いられるバーガーズ方程式と完全に数学的構造が同じであり、渋滞領域の伝播を流体の衝撃波の伝播と同一視できることを示し、初期の車の密度によって非渋滞相と渋滞相のどちらかに漸近的に落ち着くことを証明した。
 さらに上記のCA184とバーガーズ方程式の関連性に基づいて、交通流の渋滞形成ををより現実に近い形で再現できるEBCAと呼ばれるCAモデルを提出した。このモデルを詳細に解析した結果、車の密度が渋滞・非渋滞の臨界点付近にあるとき、渋滞相の解と非渋滞相の解の両者が共存できる密度範囲が存在することを示した。さらにその密度を徐々に高くしていくと、非渋滞相の解が不安定になり渋滞相の解が安定になることを発見した。以上の知見は今までに感覚的に得られていた結果の厳密な検証になっており、超離散化手法が交通流の解析手法として非常に有用であることが実証された。