表題番号:1998A-840 日付:2002/02/25
研究課題建築のライフサイクルに関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 小松 幸夫
研究成果概要
 わが国では、木造住宅の寿命は短いという先入観があるようで、一般にはおよそ30年と言われているが、我々は過去の調査によって、約40年から45年程度であることを明らかにした。
 住宅寿命の実態をみていくと、構造的には健全と思われる住宅が建て替えられている状況がかなりの頻度で存在する。それは住宅の寿命が物理的な耐久性によってではなく、他の要因で決まっていることを意味している。具体的には居住者の要求の変化に住宅の機能が追従できないということが最大の理由であると考えられる。すなわち住宅の備える機能と住宅に対する居住者の要求との不一致が建て替えなどの要因となっている可能性が高い。本研究の目的は、住宅の条件から見た増改築及び建て替えの理由を明確にすることであり、実際の住宅とその居住者について増改築及び建て替えに関する意識調査及び実態調査を行い、その結果を様々な角度から分析を行った。
 本研究では持家の戸建住宅を調査対象にして、アンケートによって、移住年、増改築もしくは建て替えの有無、現在の住宅の面積、増改築や建て替えを行う以前の住宅で気になる場所とその理由、増改築や建て替えを選んだ理由、あるいはきっかけとなった理由などを調査した。調査対象地域は、東京都八王子市内の住宅団地で、1970年に宅地造成が完成し世帯数約3900、人口約9000人である。調査方法は、アンケートによる調査用紙を対象地域全体に配布し、郵送によって回収することとした。調査用紙は1998年7月に2度に分けて、最終的に1977の調査用紙を配布し329通の回答を得た。そのうち借家の居住者からの回答1件を除いた328件を有効回答とした。まず調査対象のプロフィールを分析した後、気になる場所とその理由について分析を行っている。その結果、住宅に対する不満は「狭い」と「水廻り設備が古い」に大別され、これらの建替え行動と増改築行動に対する影響を分析した。