表題番号:1998A-822 日付:2002/02/25
研究課題Dirichlet級数の拡張と零点の分布について
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 田中 純一
研究成果概要
 この研究ではFourier解析学およびエルゴード理論を用いてDirichlet級数によって定まるBohr群K上の解析関数の性質とそれらの応用を調べてみた。
{an}を複素数列とするとき、
f (s)=Σ∞/n=1 an/ns、 s=σ+it
をDirichlet級数と呼ぶ。特にam・anamnで|an|=1となるときのDirichlet級数は
f (s)=Πp:系数(1-ap/ps-1、 σ>1
とEuler積で表現され、Riemannのζ関数と深い関連性を持つ。そしてRiemannのζ関数をBohr群K上(即ち、{logr ; rは正の有理数}で生成される離散群Γの双対群)へ拡張したとき、Kの軌道上にすべてが現れる。この性質を利用し、これらのDirichlet級数はほとんどの場合1/2<σまで解析的に拡張され零点を持たないことが示される。そしてこの結果からRiemannのζ関数による近似式を利用しその零点の分布に関して興味深い結果を得た。
いまN (σ,T)をβ>σ、0?T Riemannのζ関数の零点β+itの個数とする。流れ(K, {Tt}t∈R)のもつエルゴード性とRouchéの定理により、Riemannのζ関数の零点の分布の様子がある程度分かる:
定理 1/2<σ0のときσ0?σで一様にN (σ, T)=o(TlogT)となる。
この性質は既知の結果より現時点ではあらい評価だが、エルゴード理論を用いた新たな証明法であり今後改良の可能性は有ると思う。