表題番号:1998A-806 日付:2002/02/25
研究課題ディヴァガシオン論
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 専任講師 岡山 茂
研究成果概要
マラルメの散文集『ディヴァガシオン』のなかには、地平線、舞台、白いページなどの文学のトポスと、それらの間に広がるジャーナリスムの空間をさまよう人物たちの「彷徨」が描かれている。しかしひとたびこの作品の外に出ると、そこにはドレフュス事件によって露出するさまざまな政治的、世代的、社会的葛藤が渦巻いている。このふたつの世界をつなぐことが今の私の課題なのだが、そのための糸口として、まずマラルメとその周辺にいるサンボリスムの詩人たちのドレフュス事件のおりの反応を調べてみた。テオドール・ド・ヴィゼワ、アンリ・ド・レニエ、ポール・ヴァレリーなどの反ドレフュス派、フェネオン、ジェフロワ、アダンなどのドレフュス派が交錯するなかで、マラルメは自らの文学の理念に基づいてドレフュス派でありえた稀な50歳代の詩人であった。次に『ディヴァガシオン』で語られるその理念と、事件を通して増幅されたさまざまなイデオロギー(アナルコ・サンディカリスム、ソシアリスム、コスモポリタニスム、コロニアリスムなど)の関係を調べてみたが、マラルメがそれらのイデオロギーとどのように戦っていたかはまだしっかりと私自身把握していない。