表題番号:1998A-803 日付:2003/07/24
研究課題EU国際公務員制度と加盟国公務員制度との関係
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 福田 耕治
研究成果概要
 本研究は、国際行政学の観点から、EU(European Union)の国際公務員制度の全体像、実態を明らかにするとともに、これとの関係でEU15加盟国公務員制度との連携・協力関係についてもその特質を分析するものである。
この研究では、EU公式ホームページやEUのオンライン法律情報データベース(CEREX)、EUROLEX等を用い、EU条約、共同体制定法令、行政判例、欧州議会での質疑応答や各種報告書、欧州委員会や加盟国公務員に関する報告書などを検索し、最新の動向を踏まえて、ヨーロッパ公務員法制と現実の人事行政との関係を分析した。EUにおいては、EC条約第48条によって域内における国境を越える「人の自由移動」が、保証され、実現されてきている。しかし、公務員という職業に関してだけは自由移動の例外とされてきた。それは、加盟国の国家主権や利害がからむ微妙な問題があり、また各加盟国の公務員制度、人事行政の在り方の違いも少なくないからである。
とはいえ、近年、EU国際公務員と加盟国国家公務員との間の「協働」を前提として、EU行政と加盟国行政を連携させるための多くの媒介機関が制度化され、人事交流も進みつつある。また、欧州裁判所のEC条約第48条第4項に関する判例を通じて、EU域内における各国公務員の国境を越える自由移動が促進される方向へと向かいつつある。本稿では、こうした状況をEU行政と加盟国行政を連携させる媒介機構の制度的次元、EU国際公務員制度自体の構造的、機能的特質の次元、EU国際公務員と加盟国国家公務員の人事行政の次元から捉え、これらの相互関係と問題点について具体的かつ総合的に考察を試みた。その結果、EU国際公務員制度は、加盟国公務員制度と連携を基礎としてはじめて、EU国際行政が有効に機能し、実質化することが析出された。