表題番号:1998A-684 日付:2002/02/25
研究課題シンクロトロン放射光を使った軟X線分光
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 材料技術研究所 助手 山本 知之
研究成果概要
特性X線の微細構造には物質の化学結合状態が反映され、物質のキャラクタリゼーションに広く応用されている。しかし、我々の身近に存在する炭素、窒素、酸素などの軽元素から発生する特性X線のエネルギーは約200~600電子ボルト(eV)程度であり、それらの測定は従来型の分析装置では非常に困難であった。近年のシンクロトロン放射光装置の発達により、これらの軽元素に対する分析感度は格段に進歩し、従来のモデルでは解析できない新しい実験結果が現れている。アメリカ合衆国University of California, Berkeley校に併設されているLawrence Berkeley National Laboratoryにあるシンクロトロン放射光施設Advanced Light Source(ALS)は、世界で最も明るい低エネルギー領域(軟X線)の放射光源であり、今回その施設で実験を行う機会を得た。主として、酸素、フッ素を含む化合物のX線発光および吸収スペクトルの測定を行い、今までに報告されていない実験結果を多数得ることができた。特に、フッ化カルシウム(CaF2)とフッ化ストロンチウム(SrF2)のF K線中に現れるサテライト線強度の入射エネルギー依存性およびサテライト線の影響を受けないスペクトルの測定に成功した。これらのX線スペクトル解析に有力な計算法の一つであるDV-Xa分子軌道法を用いて、後者のスペクトルを解析し、実験結果を非常に良く説明することができた。これらの結果の詳細については本年度のALS Compendiumに掲載される予定である。また、これらの実験結果以外にも多数(特に酸化物)の実験結果があり、それらを説明するために、分子軌道計算法を用いた解析を進めている。