表題番号:1998A-666 日付:2002/02/25
研究課題模擬動作パワーによる最高挙上重量の推定に関する研究-模擬スクワット運動時のパワー測定の条件に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 専任講師 岡田 純一
研究成果概要
 筋力トレーニングは競技者だけではなく,一般成人においてもそのQuality of Lifeを高める手段として,広範に取り入れられている.筋力トレーニングの処方において,実施者の能力を適切に評価し,至適な強度のトレーニング処方を設定することは,トレーニングの効果をより引き出すことに繋がり,トレーニング中の事故あるいは傷害を防ぐことにもなる.しかし,至適な強度を導くためには,最大挙上重量(1RM)を能力の評価基準として,実測あるいは推定し,それに対する相対値を使うことが要求される.この1RMの評価は実際に自己の限界の重量に挑戦することをともなっているが,挙上重量と反復回数の関係から推定する方法も提案されている.しかし,技術が未熟な段階でも最大挙上重量を安全に精確に評価し得る方法を開発することが必要と考えられた.そこで本研究はスクワット運動を対象として,その動作条件,等張性負荷装置を用いたパワー測定時の諸変量および1RMの関係を検討し,簡易なパワー測定から精度の高い1RMの推定を試みるものであった.
 パワー測定装置に特注のアタッチメントを介して実際にトレーニングで使用するバーを取り付けた.この装置でスクワットの模擬運動を最大努力で行い,その時の時間-速度,張力およびパワー曲線からそのピーク値を記録した.また,負荷を変えた数試行中の最大値を抽出した.さらに,この動作の短縮性収縮局面を開始する膝関節角度の差異や負荷条件についても種々検討した.その結果,膝関節角度は大腿部が床と平行である深い位置(パラレル),あるいは浅い位置(120度)よりも,90度の条件が最も高いパワーを発揮できる傾向にあった.一方,力,速度およびパワーの最大値と1RMの関係は,力との相関が高い傾向を示していた.今後も検討を重ね,より精度の高い推定法の開発を進めていく.