表題番号:1998A-663 日付:2002/02/25
研究課題脊髄と前脳における勃起機能の性分化解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 山内 兄人
研究成果概要
ラットの勃起は亀頭のカップ状の変化(亀頭勃起)と陰茎体の反り返り(フリップ、陰茎体勃起)よりなる。ラットの場合は海綿体基部にある球海綿体筋と坐骨海綿体筋に神経を脊髄の球海綿体脊髄核と背外側核が重要な働きをしている。勃起はペニスの皮膚刺激により生じる反射勃起と、発情している雌の存在により生じる非接触性勃起があり、前者は脊髄の機能を中心として、後者は嗅覚-前脳を中心として制御されている。
 ペニスや勃起を制御する機構は周生期のアンドロゲンの存在により、発達すると考えられている。本研究は妊娠ラットにアンドロゲンを投与し、さらに生れた雌ラットにアンドロゲンを投与することでペニスを形成させ、勃起機能をはかることで、勃起に関わる末梢器官と中枢神経系の性分化を解明したものである。
妊娠14日目から21日まで1mg,2mgまたは3mgのTestosterone Propionate(TP)を投与し、出生後の雌ラットに出生日から1日おきに8日まで0.5 mgを投与した結果、3mg投与群のすべての雌には雄に近いペニスが形成され、脊髄の球海綿体脊髄核は雄に近いものであった。しかし、2mg投与の雌では30%が正常に近いペニスをもち、残りは不完全なペニスであった。1mgではすべてが不完全なペニスをもっていた。反射勃起は投与アンドロゲン量の増加にともない発現が強まり、非接触性勃起は1mgですでに雄と同じレベルに達し、3mgでも同程度であった。これは、非接触性勃起に必要な脳の機能は1mgTPで発達するが、反射勃起に必要な脊髄の機能は3mgTPを必要とすることを示すが、後者に関してはペニスの発達の度合いを考えると、脊髄のメカニズムも1mgで完成されている可能性は否定できない。この点をさらに明らかにする必要がある。