表題番号:1998A-657 日付:2002/02/25
研究課題自己教示の内容が選択できる場合とできない場合における自己教示訓練が大学生のシャイネスの変容に及ぼす影響
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 根建 金男
研究成果概要
本研究の目的は、大学生のシャイネスの変容に及ぼす自己教示訓練の効果を検討する際に、個人が望む側面に焦点を当てた自己教示文を選択できる場合と、そうでない場合の効果を比較検討することであった。被験者は、シャイネスの高い大学生であり、①個人に合わせた自己教示を選択できる自己教示訓練条件(個人が望む側面に焦点を当てた自己教示文を言いきかせる訓練を行う)、②個人に合わせた自己教示を選択できない自己教示訓練条件(個人が望む側面とは異なる側面に焦点を当てた自己教示文を言いきかせる訓練を行う)、③統制条件(特別な訓練は行わない)の条件に振り分けられた。このようなトリートメントを行う前(プリテスト)と後(ポストテスト)に、被験者が初対面の異性と会話する場面を設け、その際のシャイネスを認知・感情・行動の側面から多面的に測定した。その結果、いずれの自己教示訓練群でも、統制群との比較において、トリートメントを行うことによって、特性シャイネス、状態シャイネスが低減し、セルフエフィカシーが高まった。
このことから、①と②の条件の違いにもかかわらず、自己教示訓練がシャイネスの改善に有効であることが明示された。一方、①の条件の方が②の条件よりも効果が大きいことが予測されたが、シャイネスの変容に限定すれば、2つの自己教示条件の効果はおよそ同等であったといえよう。このことを裏づけるように、訓練に対するはじめの取り組み姿勢、訓練期間中の訓練への違和感、訓練がうまくできた程度のなどに対する自己評定では、2つの自己教示条件間に差は認められなかった。しかし、①の条件でのみ私的自己意識(の強さ)が低減し、自尊心が高まったことから、本人が望む自己教示文を用いた自己教示訓練を行うことで、シャイネスと関連する現象に対する般化効果が促進されるといえよう。ただし、行動面からみたシャイネスの印象評定では、②の条件でのみシャイネスの程度が改善しており、その理由を明らかにすることは、今後の課題の一つだろう。