表題番号:1998A-653 日付:2002/02/25
研究課題人口高齢化と世代間扶養
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 嵯峨座 晴夫
研究成果概要
 この研究は、最近、先進諸国はもとより発展途上諸国においても顕著になりつつある人口高齢化の動向を最新のデータにもとづいて明らかにするとともに、高齢化がもたらす社会変動の諸相を世代間扶養に焦点をあてて分析することを目的としている。作業は、まず最新の人口統計、労働力統計の収集から着手した。国別の資料収集とあわせて、国連の1996年人口推計および1998年人口推計をディスケットで入手しデータファイルの整備をはかり、一方ILOからも最新の労働力推計データの入手を行った。
 これらのデータをもとに日本はじめ主要先進諸国の従属人口指針と世代間比等の年齢構造指標について長期時系列を作成し、高齢化の国際比較を行った。一方、各国の労働力率データを用いて労働力による従属負担についても検討を行った。また、発展途上諸国のうちでも近年、高齢化の進展が著しいアジアのNIES、中国、ASEANなどの国々を対象に1950~2050年についてデータを作成し比較分析を行った。
 これらの分析作業によると、100年以上にわたって徐々に高齢化の過程をたどった先進諸国の場合には、高齢化はミクロの面で穏やかなインパクトを与えたが、マクロでみると将来の世代間扶養のあり方に大きな問題を引き起こしているといえる。一方、発展途上諸国の場合には高齢化がむしろ今後著しく進むので、おしなべて21世紀の前半において世代間扶養の問題は、ミクロ・マクロの両面において顕在化することが明らかとなった。