表題番号:1998A-652 日付:2002/02/25
研究課題食道筋層間神経叢の微細構造
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 小室 輝昌
研究成果概要
 消化管に内在し、蠕動運動の調節を行う筋層間神経叢は食道横紋筋部にも存在するが、この部位では迷走神経の直接支配を受けることが定説となっており、内在性神経叢の構造と機能については不明な点を多く残してきた。本研究では、食道筋層のほぼ全長にわたって横紋筋線維をもつモルモット食道を材料に用い、食道横紋筋部筋層間神経叢の微細構造を明らかにすることを目的として、電子顕微鏡的に検索を行った。
 その結果、モルモット食道筋層間神経節は神経筋細胞、神経膠細胞およびそれらの突起が複雑に絡み合った緻密な神経網を形成し、中枢神経系組織に類似した特徴をそなえている一方、細部については食道固有の構造を持つことが明らかとなった。神経節への知覚性および介在性ニューロン入力の少ないことを示す神経終末の数や種類に乏しいこと、神経要素の疎な神経節の形状を整え機械的衝撃を緩衝すると推測される神経膠細胞の特異な層板状構造、等が観察された。また、迷走神経起源と考えられる有髄線維が、ミトコンドリアを豊富に含む軸索膨大部との連続性を持って神経節内に観察されたことは、知覚終末を示唆する貴重な観察結果と言える。NADPH-d反応の微細構造レベルの観察においては、多数の神経節細胞に反応が認められる一方、外来性神経束では軸索総数の約3%に反応が見られるのみであることから、この観察所見は、横紋筋支配のNADPH-d反応陽性線維が内在性由来であることを、更に支持するものと推定した。