表題番号:1998A-650 日付:2002/02/25
研究課題筋分化におけるアクチビン/フォリスタチン系の役割に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 木村 一郎
研究成果概要
 本研究は、筋分化制御因子としてのアクチビン/フォリスタチンの役割について考察することを目的としている。97年度において、発生段階の異なる筋芽細胞のアクチビンに対する応答性の相違に焦点を合わせ、孵卵3.5~15日目のニワトリ胚の筋芽細胞および孵化後3日目の幼鶏の胸筋由来の衛星細胞の初代培養系を用いて、形態学的、免疫化学的、生化学的に発生段階依存的な感受性の変動について調べた結果、アクチビンの筋分化抑制作用については、進んだ発生段階の細胞ほどその感受性が低くなることが示唆された。今年度においては、発生段階がより初期のものについてアクチビン/フォリスタチン系の役割に調べるため、これまで明確な報告がない培養初期体節から遊出してくる筋原細胞による筋発生について調べた。
 先ず、その培養系を確立するため、材料とする胚の胚齢、培養液等の培養条件の検討を行った。その結果、胚齢3.5日のものが適当であること、培養条件としては80%DMEM-20%FBS-30ug/ml ニワトリトランスフェリンの増殖培養液中で24時間培養した後に、98%DMEM-2%FBS-30ug/ml ニワトリトランスフェリンの分化培養液に転換するのが適当であることが判明した。この系で調べた結果、体節由来の筋原細胞による筋の発生・分化はアクチビンAによって著しく抑制されること、その感受性は3.5日胚の胸筋由来の筋芽細胞よりもさらに高いことが示された。このことは、アクチビンが筋細胞分化において重要な役割を果たしていることを示唆していると考えられる。
 また、フォリスタチンの筋発生促進作用についても、発生段階が初期の細胞ほど高い感受性を示し、体節由来筋原細胞は著しく高い感受性を示すことが示された。