表題番号:1998A-649 日付:2002/02/25
研究課題ボールゲームのスポーツ方法学的研究―卓球競技の競技力向上を求めて―
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 教授 葛西 順一
研究成果概要
 本研究は、競技力向上を図るための選手に対するコーチングそのものを裏付ける科学的成果を得るため、バイオメカニクス的実験手法を用いて、卓球競技を対象として行ったものである。
まず、卓球選手のフォアハンドストローク中の両足にかかる力を床反力で測定するとともに、一連の動作を2台の同期させた高速度映画撮影用カメラで記録した。バックスピンに対するドライブと、トップスピンのボールに対する前陣および中陣からの強打では、発揮された右股関節伸展トルクの強度が大変高く、それが体幹および腕の打球方向への回転に大きく貢献していることがわかった。もし、これらの結果が一般化されるのであれば、右利きの選手にとって、フォアハンドストロークの強化のための下肢の筋力トレーニングには、最大筋力を高めることを目的として、低速度高負荷での左右股関節の伸展運動を取り入れることが望ましいものと思われた。
また、トップクラス選手の重要な打法の一つに、台上のバックハンドフリックがある。この一連の打球動作中の分析を行った。2台の同期させた高速度ビデオカメラで記録し、3次元解析ソフトで分析を行った。従来、バックスピンのボールに対するバックハンドフリック動作の指導上のポイントとして、①ラケットの打球面を上に向けてボールの落下地点付近にもっていく。②そこで、手首を引きながらいったんラケットを横にし、すばやく打球方向に反転させ、回転をくわえながら手首をかえす、という内容があげられていたが、今回の分析により、従来の指導上のポイントを押さえることができたばかりでなく、被験者個人の詳細な動作の特徴をとらえることができた。ラケットの動作に、肘あるいは肩を含めた動きの分析を加え、全体的に分析する方向である。
現在は、上記に加えフォアハンドスマッシュの連続打球中の動作を熟練者および非熟練者で比較し、その習熟過程を検討し、実際のコーチングを裏付けるための研究を行っている。