表題番号:1998A-646 日付:2004/01/24
研究課題住環境整備に関する住宅・都市計画制度の日英比較
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 助教授 早田 宰
研究成果概要
イギリスの都市再生プログラムである統一都市再生補助チャレンジ基金(Single Regeneration Budget Challenge Fund=通称SRB)制度とわが国の住環境整備事業の比較を行う。
 SRBの特徴は、①中央省庁の縦割り予算制の廃止、②地域事務所への一括化、③事業への競争入札制の導入(bidding)、④対象地区抽出条件の撤廃(事業プログラムの実質的審査による予算化)、⑤対象地区限定の柔軟化(地区レベル、自治体レベル、自治体間レベルの自由化)、⑥複合的剥奪(Multiple Depravation)の状況にある地域に対する予算優先配分、⑦国単位で剥奪レベルの順位をつけ、もっともスコアの悪い地区に優先配分すること、⑧住宅政策および民間公益住宅組織(HA)との連携、⑨地域ネットワーク構築を申請の前提とすること、⑩EU基金との連携、等の10点が指摘できる。
 一方わが国の住環境整備諸制度は、不良住宅地区改良法とその要綱が基調で、建設省中心の都市計画事業の枠内にある制度である。また都市再生の包括的な新制度、中心市街地活性化法に基づく事業の事業認可プロセスはまだ確立されているとはいえない。
 イギリスの場合は、スラム化した地区をクリランスする事業以外に、その一歩手前の減退地区に自助の機会を与え思想が制度にある。一方、わが国の場合の住環境整備諸制度は、最悪地区の概念をやや緩和することが存在理由で、公平性、客観性を重視する一方、地区の自助を支援する発想が欠如している。反面、イギリスの場合、減退地区といっても、競争入札制の導入によって人的、知的資源を動員できる地区だけが生き残れる仕組みとなっていること、財政基盤の弱い自治体の申請が慎重になること、などの問題も指摘される。 
 以上の両者の比較から、日本の40年に及ぶ制度の特徴を明らかにし、またその再編の検討項目および選択肢が整理できた。