表題番号:1998A-644
日付:2002/02/25
研究課題介護保険導入後における地域福祉の理念と具体化に関する研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 社会科学部 | 教授 | 久塚 純一 |
- 研究成果概要
- 研究は、1.福岡県内の市町村、2.佐賀県内の市町村の二圏域の介護保険事業実施計画の策定について、書面による調査とインタビュー調査をもとにしておこなった。
福岡県と佐賀県に絞った理由は以下の点にある。制度上、介護保険の保険者は市町村であることが原則となっている。そのことから、小さな地町村にとっては要介護認定事務、サービスの提供、保険財源等について困難性が付きまとうことは予測された。この場合、小さな地町村には以下のような二つの選択肢があった。それは、1.「内容的に不十分でも、地域特性を踏まえた介護保険とするか?」、2.「画一性や平等性を重視するか?」であった。全国的に介護保険事業の広域的実施が模索されている過程で、まず、佐賀県では、佐賀市を中心とした大広域連合が実現に向かって大きく前進した。さらに、福岡県では、ほぼすべての町村ともいえる70近くの町村が広域連合的実施に踏み切ろうとした。福岡県に見られるような大連合は前代未聞であり、多くの議論を巻き起こしている。以上のことから、「地域特性の重視か?」、「画一的平等性?」というコミュニティ・ケアの根幹に関わる問題を、もっぱら介護保険事業の広域的実施という視角から検討することを目的として、対象を二つの県に限定して集中的な調査を実施した。
アンケート調査とインタビューを通じて、以下のような担当者の意識と今後の課題が明らかとなった。それらは、1.まず、介護保険についての意識は、準備に取りかかることも遅れがちであったことから、アイデンティティーを持って地域特性を反映させた事業計画を作ろうとする意識が希薄になっていると考えられること、2.そのこととの関係で、「出来れば苦労せずに、画一的な事業実施計画が策定されれば楽になる」という意識が担当者の意識の基底に芽生え、「平等性」の確保をうたいつつ、広域的実施に向かわせたと考えられること、3.以上のことから、今後は、地域特性を踏まえた実際のサービス提供が、住民から距離のある大圏域で実施できるかが課題となるであろうこと、である。