表題番号:1998A-626 日付:2002/02/25
研究課題高硝酸・高塩濃度産業廃液からの生物学的窒素除去に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 専任講師 常田 聡
研究成果概要
ロンドン条約の改正・施行に伴い、1996年1月1日より酸・アルカリ廃液の海洋投棄処分が禁止となった。また、湖沼・河川の富栄養化等の防止上、下水道放流に関しても窒素の排水規制が厳しくなる方向にある。このような状況の中、LSI・電子チップ等の廃棄物より金・銀・パラジウム・白金といった貴金属を王水・アンモニア等により回収する際に排出される廃液(以後、製錬廃液と呼ぶ)は、硝酸・アンモニアといった酸・アルカリを大量に含んでおり、適切な処理法の開発が求められている。しかし、廃液には数%から十数%と非常に高濃度の無機塩類が含まれているため、通常生物処理が困難であると考えられている。
以上の背景を踏まえ本研究では、すでに獲得した高塩濃度下でも活性を示す微生物(硝化菌・脱窒菌)を用いて、嫌気好気生物膜循環法による実験装置において、製錬実廃液を窒素の下水道放流規制値(T-N 240g/m3)以下まで処理するための操作条件を模索した。また、嫌気槽好気槽の最適な容積比、循環比等の計算を行った。
循環比4という条件下で連続生物処理実験を行った結果、徐々に滞留時間を短縮しながら微生物を馴養することによって、2~5倍希釈の製錬実廃液を下水道放流規制値まで処理することができた。また、滞留時間はスタート時の1/3以下まで短縮することができた。次に、循環比4の連続処理実験の結果に基づいて、規制値を満足し、且つ装置全体の滞留時間が最小となる嫌気槽好気槽の容積比を求めた。嫌気槽での脱窒、好気槽での硝化がともに1次反応近似可能であり、嫌気槽では脱窒のみ、好気槽では硝化のみしか行われないと仮定した場合、トータルの滞留時間を示す式を容積比の関数で表すことができた。そして、最小の滞留時間を与える容積比は嫌気槽 : 好気槽 = 1 : 1であることがわかった。さらに、循環比の値を変化させ、規制値を満足するような滞留時間を求めた結果、トータルの滞留時間が最小となる循環比は9であることがわかった。