表題番号:1998A-617 日付:2002/02/25
研究課題半導体光スピニクスの超高速応答特性の制御に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 竹内 淳
研究成果概要
これまでのエレクトロニクスにおいて、スピンという量子状態はデバイスの機能としては利用されてこなかった。しかし、近年スピンを利用することによって、従来にない新しいデバイス機能が実現できるのではないかという期待が高まっている。本研究では、InGaAs量子井戸でのスピン緩和過程の測定とその機構の解明に取り組み、量子井戸の設計パラメータを変えることによってどの程度スピンの緩和過程を制御できるのかを調べた。その結果、InGaAs量子井戸での電子のスピン緩和時間は量子化エネルギーに反比例する(マイナス一乗に比例する)ことが明らかになった。InGaAs量子井戸のバンドギャップはGaAs量子井戸のバンドギャップの半分程度と小さいが、バンドギャップの縮小によって大きくなる効果として、伝導帯と価電子帯とのバンドミキシングによって生じるスピン緩和の機構(Elliot-Yafet効果)がある。そこで、量子井戸内のスピン緩和機構として、Elliott-Yafet効果のスピン緩和時間を理論的に求め、スピン緩和時間が量子化エネルギーに反比例することを明らかにした。これは、実験的に求めたInGaAs/InP量子井戸のスピン緩和時間の量子化エネルギー依存性と同じ依存性であり、Elliott-Yafet効果が支配的なスピン緩和機構であることを示唆している。InGaAs/InP量子井戸で量子化エネルギーによってスピン緩和時間が制御できることを明らかにしたことにより、光通信に対応する波長1.55ミクロンで、スピンをデバイス応用しうる可能性に大きく道を開いた。