表題番号:1998A-616 日付:2002/02/25
研究課題河岸に植生群落を伴うウォッシュロードの堆積とそれに伴う流路の安定化に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 関根 正人
研究成果概要
 本研究では、まず植生を伴わない河道を対象として、シルトや粘土がウォッシュロードとして輸送された場合に、これらが低水路水際線に沿って堆積を引き起こすメカニズムを明らかにする水路実験を行っている。その結果、川幅の縮小にまで発達するウォッシュロードの堆積は、洪水前後のような流量変動が生じる場合の減水期により顕著な形で生じることが理解された。次に、低水路水際線に沿って樹木状の植生群落が生じている場合を対象として、群落の配置パターンの違いによる流れ場の変化について系統的な実験を行った。その中でも、植生群落が左右岸に交互に繁茂している場合には、群落を避けて流れるような特徴的な「蛇行流」が誘起されることを明らかにし、群落の規模や幾何学的形状、群落間の距離などの配置条件の違いによって「蛇行流」のパターンが大きく変化することを示している。さらに、この流れによって、群落一つに対して「洗掘域と砂州」とからなる一組の河床パターンが周期的に形成されることが理解された。このことは、低水路河岸に植生群落が帯を成して繁茂する場合に、ここで検討したような交互配置となるように植生群落を残すことで、人工的な手だてを講じることなく、多様な河川空間を創造することができることを示唆している。
 また、このような実験的研究と平行して、一旦堆積したシルト・粘土が再び浸食されるメカニズムを明らかにするための、粘着性材料の浸食実験も進めてきている。ここでは、粘土と砂とからなる土塊を供試体とし、その粘土含有率を変化させた一連の実験を行い、土塊の浸食速度が粘土含有率に応じて特徴的な変化をパターンを示すことなど、今後に向けて有用な知見が得られている。このように、このテーマに関して今後研究を展開していく上での基礎を固めることができた。