表題番号:1998A-615 日付:2002/02/25
研究課題バイオレメデ ィエーションを目的とした有機窒素化合物分解微生物の探索と分解試験
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 助教授 桐村光太郎
研究成果概要
 タンカーの座礁や石油パイプライン事故の数は増加傾向にあり、これらの人為的災害によって流出した石油は世界的には年間数百万トンと見積もられている。石油中の成分としては、揮発成分が消失したのちに残留する成分に毒性の強いものが多く、代表例として、多環芳香族化合物や含窒素有機化合物、含硫有機化合物がある。これらは自然界において残留性が高いため、石油流出事故が起こった土壌では長期間にわたって汚染が継続することになるが適切な処理方法は確立されていない。筆者らは、生物機能を利用した環境浄化、いわゆるバイオレメディエーションに関する研究を進めている。本研究においては、難除去性有機窒素化合物のモデルであるカルバゾールを分解する微生物を探索し、分解試験を行った。
 日本各地の土壌や備蓄原油、海水、河川水、等を試料として、カルバゾール分解微生物を探索した。得られた微生物からカルバゾール分解能力が高いものを選抜し、最優良菌株としてグラム陰性細菌の一種Sphingomonas sp. CDH-7を取得した。CDH-7はカルバゾールをアントラニル酸を経てアンモニアにまで無機化するが、有害な中間体を蓄積しない。また、他の有機化合物存在下においても選択的にカルバゾールを分解するとともに、アントラセンやフルオレン、ジベンゾフランなどが共存した場合にも分解能力は低下しなかった。細胞の増殖をともなわない休止菌体反応により連続的分解試験を行った場合、48時間で2200 mg/lのカルバゾール分解が可能であり、約90%をアンモニアにまで無機化することが可能であった。以上の性質は、CDH-7がバイオレメディエーションに適した細菌であることを示唆する。