表題番号:1998A-599 日付:2002/02/25
研究課題グリースに対するビンガム粘弾性 流体潤滑の実験的および理論的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 林 洋次
研究成果概要
 グリースは、その潤滑管理が容易であることから広く使用されているが、十分な潤滑理論は確立されていない。本研究では以下のように従来の潤滑理論を拡張した新しい知見を得た。
 (1)グリースに降伏応力より大きな一定応力を付加しながら強制振動させる方式と回転運動のみさせる方式の2つの2重円筒方式のレオメータを併用することによって、グリースのビンガム粘弾性特性を測定した。この新方式によるグリースの降伏応力および粘性係数と弾性係数のせん断応力に関する非線形特性を実験的に求め、グリースに対する一般的なビンガム非線形粘弾性4要素レオロジー方程式を提案した。
 (2)このグリースのレオロジ方程式に降伏応力テンソルを導入し、粘弾性特性に起因するコアの生成消滅の時刻歴を配慮し、またコアが潤滑面間を浮いて流れる場合やコアが壁面に一部付着する場合などに分類して、記憶現象を考慮した円柱座標系における一連の潤滑方程式を誘導した。このように記憶現象を配慮しているため初期値境界値問題となり、膜厚方向にもコアの形状が変化するので、時間と空間すなわち4次元的取扱いが必要で、膨大な数の格子点を有する差分法による数値解析を行って、グリースのビンガム粘弾性流体潤滑理論を構築し、かつ動荷重下の有限幅スラスト軸受の性能に及ぼすグリースのビンガム非線形粘弾性特性の影響を理論的に解明した。
 (3)動荷重下の有限幅スラスト軸受の試験機を試作し、透明なアクリル樹脂で製作した軸受と軸との隙間内を潤滑剤で満たし、電磁加振機によって軸受を振動させ、かつ軸を回転させながら、非接触変位計を用いて軸受隙間の各時刻に対応する潤滑膜内の圧力をまずニュートン流体であるギヤ油を潤滑剤として用いて測定し、次にグリーズを用いて軸受隙間の各時刻に発光するストロボ装置を自作してグリース膜内のコアの形状を写真撮影した。