表題番号:1998A-598 日付:2002/02/25
研究課題ガロアの逆問題の計算機による構成的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 橋本 喜一朗
研究成果概要
 与えられた体kと有限群Gに対して、ガロア拡大K/kでそのガロア群Gal(K/k)がGと同型であるものが存在するかどうかを調べ、そのようなK/kを全て求める問題を「ガロアの逆問題」という。一般のGに対しては存在の証明すら未解決の難問である。一方、存在が知られている場合に全てを求める問題に関しては、そのガロア群がGと同型な既約多項式をパラメータ付きで構成し、全てのK/kがパラメータを特殊化することによって得られること(genericな多項式)を示すという手法が考えられる。本研究は、比較的簡単な非アーベル群である二面体群に対して、この手法を計算機の数式処理を利用して実行したもので、以下のような成果を得た:Dn:=<α, β|αn=β2=1, βαβ-1=α-1>(位数2nの二面体群;nは奇数)とする。このときcos (2π/n)∈kという条件の下で、cをパラメータとする多項式
G (X; c):=Пn-1/j=0(X-ζjζj+1)+cj :=ζ j-ζ-j/ζ-ζ-1)
k (c)上のn次既約多項式であり、そのガロア群はDnと同型になる(ζは1の原始n乗根)。さらに、GX; c)はk上genericであることが判明した。これは、任意のDn-拡大K/kが以下の様な生成元xを持つ、というそれ自身興味深い定理を示すことにより証明される。
α(x)=1/-x+ω' β(x)=1/x' (ω:=ζ+1/ζ).
以上の結果はn=3の場合J. P. Serreにより知られていた事実を著しく一般化したものである。また応用として、k上のgenericなn次巡回多項式で極めて単純な形のものが得られる。与えられた代数体k上にアーベル拡大を構成する問題はHilbertの第12問題として知られる難問であるが、本研究はn次巡回拡大という特別な場合の一般解を与えるものである。