表題番号:1998A-578 日付:2002/02/25
研究課題超臨界条件下における岩石―熱水間の金属元素分配に関する実験
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 内田 悦生
研究成果概要
 玄武岩とNaCl水溶液間における元素の分配実験を行った。玄武岩としては地質調査所の標準岩石試料JB-1aを用いた。実験では、元素分配の温度、圧力および塩濃度依存性を調べた。玄武岩の粉末60mgとNaCl反応溶液80μlを直径4.4mm、長さ約3.5cmの金チューブに封入し、テストチューブ型高圧反応容器を用いて実験を行った。温度依存性の実験では、圧力1kb、NaCl濃度1mol/lとし、温度は500、600、700、800℃と変化させた。圧力依存性の実験では温度600℃、NaCl濃度1mol/lとし、圧力は0.5、0.75、1kbと変化させた。塩濃度依存性の実験では温度600℃、圧力1kbとし、NaCl濃度は0.5、1、2、3、4mol/lと変化させた。
実験終了後、固相と液相を分離し、粉末X線回折装置により生成鉱物を同定し、また、EPMAを用いて生成鉱物の化学組成を決めた。液相中の各イオンの組成はICPにより求めた。固相に関しては、フッ酸と硝酸を用いて溶解した後、ICPにより組成を求めた。
実験の結果、遷移金属であるMn、Fe、Co、Znの水溶液中の濃度は塩濃度および温度の上昇または圧力の低下に伴い増加した。これは、実験条件下においてこれら遷移金属が主としてトリクロロ錯体をなして溶存していることで説明される。Mgの変化は遷移金属に比べて小さいが、圧力依存性を除いて遷移金属と反対の傾向を示した。Naは低温、高圧ほど水溶液中に濃集し易い傾向を示した。CaとKは複雑な挙動を示し、生成する鉱物相によって支配されている。