表題番号:1998A-576 日付:2002/02/25
研究課題新規育種糸状菌による植物系バイオマスを原料としたクエン酸生産技術の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 宇佐美 昭次
研究成果概要
 クエン酸は生体に安全な酸味料として食品や医薬品に広く使用されている。この工業的生産は、糸状菌Aspergillus niger(クロコウジカビ)を使用した発酵によって行われており、世界的生産量は年間約50万トンである。しかし、クエン酸は製品としては安価であり、低価格な原料からの生産方法が求められている。筆者らは、安価かつ未利用な資源である植物系バイオマス(主成分はセルロース)からのクエン酸生産について検討しており、すでにセロビオースやキシランからのクエン酸生産に成功している。本研究においては、セルロース加水分解物からのクエン酸生産試験を行い、高収率の生産に成功した。
 供試菌としては,Aspergillus niger Yang no. 2 およびこれを親株として誘導した2-デオキシグルコース耐性変異株C192を使用した。原料となる液体培地としては、セルロース加水分解物およびこれを適宜濃縮して糖濃度を調節したものを使用した。クエン酸の生産試験は、サトウキビ搾り粕であるバガスを担体として液体培地を染み込ませて行う半固体培養法により行った。緩衝液中に100 g/lのセルロース粉末を分散させ、セルラーゼ製剤(Meicelase P-1,明治製菓)を添加し72時間処理して、還元糖60 g/l(主成分としてグルコース54g/l)を含む加水分解物を得た。これを還元糖量が150 g/lとなるように濃縮したものを液体培地として使用しクエン酸生産試験を行ったところ、3日間でYang no. 2 およびC192はそれぞれ92 g/l、102 g/lのクエン酸を生産した。C192についての結果では、供与還元糖当たりの収率が68.2%に達しており、セルロース原料を使用したクエン酸生産でこれまでの最高値を達成した。