表題番号:1998A-574 日付:2002/02/25
研究課題遠赤外反射吸収スペクトル法による金属単結晶表面の酸素吸着にともなう再構成過程の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 伊藤 紘一
研究成果概要
研究成果の概要を以下にまとめる。(各項目の[ ]内は文献番号)
(1)  多結晶蒸着金およびAu(111)表面におけるアクロレインの吸着構造に関する研究 [1]
超高真空下におけるAu(111)表面でのアクロレイン分子の吸着構造を高感度赤外反射吸収スペクトル(IRAS)法を用いて調べ、吸着量の増大に伴なう孤立→会合→飽和吸着の各段階における吸着様式、配向、分子間相互作用の詳細を明らかに、IRAS法が平面分子の二次元的配列構造の解明にきわめて有力であることを示した。
(2) Au(111)およびAg(111)表面における1,3―ブタジエンの吸着構造に関する研究 [2]
 超高真空下におけるAu(111)表面でのアクロレイン分子の吸着構造をIRAS法を用いて調べ、吸着量の増大に伴なう孤立→会合→一層飽和→多層吸着の各段階における吸着様式、配向、分子間相互作用、分子構造の詳細を明らかにした。特に、熱力学的に不安定なs-cis型が数層吸着状態でのamorphous相に局在することを示した。
(3) Ag(110)面とその原子状酸素再構成面におけるエチレンの吸着構造に関する研究 [3]
Ag(110)面とその原子状酸素による一連の再構成表面(p(nx1)-0-Ag(110)、n=2, 3, 4, 6)でのエチレン分子の吸着様式の相違を、導入量によるIRASスペクトル変化を測定・解析することによって調べた。その結果、エチレンがAg-0鎖に選択的に吸着するとする従来の考え方は誤りで、吸着サイトはAg-0鎖の両側で対を形成し、エチレン分子の導入量の増加によりサイト対の一方が占められた状態(α―状態)と両方が占められた状態(β―状態)が段階的に生じることを明らかにした。
(4) Ag(111)およびAg(110)面におけるアクリロニトリルの吸着構造に関する研究 [4]
 Ag(111)およびAg(110)面におけるアクリロニトリル分子のIRASスペクトルの測定・解析結果をもとに、各表面における吸着様式、構造、配向、分子間相互作用、二次元的秩序構造を明らかにした。調べた。その結果、(ii)アクリロニトリル分子がAg(110)面ではCN基を介して弱く配位し傾いた配向をとるのに対し、Ag(111)面では分子面を基板に対しほぼ平行にして物理吸着しているこて安定であること、などが明らかになった。