表題番号:1998A-572 日付:2002/02/25
研究課題オーステナイト鋼の加工誘起変態を活用した磁気記録材の基礎研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 浅川 基男
研究成果概要
 機密機械、産業用ロボット、自動車、鉄道車両、建設機械などでは、空圧や油圧を利用した位置検出用アクチュエータが多く採用されている。従来のピストンロッドの位置検出法としては、ロータリエンコーダや作動トランス等位置測定装置をシリンダ外部に装着する方法やロッドに等間隔の溝を設け、銅等の磁性の異なる金属でその溝を埋め磁性部と非磁性部を交互に配列し、磁気センサで検知する方法があった。しかしいずれも検出精度や堅牢さに問題を抱えていた。そこで、この磁気特性を利用した方法として、オーステナイト鋼のひずみ誘起変態を利用する方法が実用化されている。マルテンサイト化した材料を一定間隔でレーザにより溶融さっせてオーステナイト組織にすることで磁気スケールを形成する。しかしレーザによる溶融は加工時間が長くかかり生産性が低く高価なため、特殊な用途に限定されていた。そこでレーザ加工法に代わり塑性加工による磁気記録法を採用することにより、より生産性の高い加工法を研究開発した。この結果以下の成果を得た。
(1) 加工部分のひずみ、硬さとマルテンサイト生成率の関係を求めることができた。これにより、加工後のマルテンサイトの析出状況を把握することができ、磁気目盛りを作成する際の圧印工具最適形状を評価する指針を得ることができた。
(2) 磁気の波形が明瞭に検知できる圧印形状は三角形型であり、工具頂角60°ピッチ3mmの場合に既存のレーザ加工による磁気目盛の磁気波形に近い波形を得ることができる。
(3) マルテンサイトの分布状態は長手方向、深さ方向とも0.5mmに集中分布する状態を適当とする。
 以上より、塑性加工によるオーステナイト鋼のひずみ誘起変態を利用し適切な条件の下で圧印すれば、従来システム同等の0.1mm単位の位置検出精度を実現、かつ生産性の高い塑性加工による磁気目盛りの作成が可能である。