表題番号:1998A-570 日付:2005/03/08
研究課題建設工事に伴う地盤挙動予測システムの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 赤木 寛一
研究成果概要
 近年、都市の過密化が進み、近接施工が多く行われている。近接施工を行う場合、既設構造物周辺の地盤挙動を予測し、その対策を検討する必要がある。昨今、様々な数値解析が行われているが、そのほとんどが個別の要因を節点外力や節点変位によりモデル化しており、施工プロセスを忠実に再現するには至っていない。本研究では、軟弱地盤における杭打設工事を取り上げ、貫入プロセスを考慮した有限要素法シミュレーションを実施した。
 本解析ではBingham流動則によるFEMシミュレーションを実施した。また、同時に、流動FEMプログラムで得られる粘塑性変形の等価節点力を地盤要素に作用させて、圧密解析を行うことにより、杭打設に伴う間隙水圧変化のシミュレーションを実施した。杭周面とそれに接する地盤との間に厚さを持たないGoodman型のジョイント要素を配置し、各計算ステップごとに有限要素の再分割をすることにより、杭の貫入過程のモデル化を行った。地盤要素の上に模型実験で用いられた上載荷重に相当する上載要素を配置した。杭頭の節点に、模型実験における貫入力に相当する節点力を作用させ、6cm貫入時から42cm貫入時まで貫入シミュレーションを行った。なお、地盤要素のヤング率E=100・Cu、塑性粘度μ=1680・Cu、降伏値τy= Cu(Cu:粘性土の非排水せん断強度)とした。また、ジョイント要素の接線方向剛性ksは、杭貫入速度が模型実験で用いられた値となるように設定した。
 杭打設シミュレーションにおいて流動FEMプログラムを用いることにより、模型実験でみられた地盤の回転移動が再現された。これは、通常の弾塑性体力学に基礎を置くFEMシミュレーションによっては得ることのできないものである。