表題番号:1998A-569 日付:2002/02/25
研究課題分子モーターのカオス動力学的機構とコヒーレンスの発生条件の理論解析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学部 教授 相澤 洋二
研究成果概要
 アクトミオシン系における張力の発生起源は、それぞれのフィラメント上の活性部位およびミオシンヘッドによるATPの加水分解作用によって生じる化学エネルギーから力学エネルギーへの変換機構にある。
 本年度の研究では、不応期と化学反応に起因する加速度、さらに粘性の効果を取り入れた力学モデルによってミオシンヘッドの運動の多様性を解析した。不応期の長さはもっとも敏感に運動の特性に影響を与えるパラメータとなることを確認し、精密な分岐構造を明らかにした。現在までに得られた結果を整理すると、
(i)  運動様式には周期振動とカオス的振動がある。
(ii)  カオスの発生ルートは、2n分岐、フィボナッチ分岐、サドルノード分岐を、不応期のそれぞれの領域で示す。
(iii) 化学エネルギーから力学エネルギーへの変換効率は、周期的運動とカオス的運動では著しく異なる。
本研究で精密な分岐構造が把握できたことにより、アクチン、ミオシンの両フィラメントの多体問題のモデル化に一定の指針を得ることができた。現在、すべり運動の理論モデルの作成に取りかかっている。