表題番号:1998A-568 日付:2002/02/25
研究課題組織能力の諸次元と測定可能性
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 教授 藤田 誠
研究成果概要
 本年度はこれまでの研究経緯を踏まえて、経営資源、組織能力と組織デザインの概念的な関連に留意しながら理論的な概念枠組の開発を行った。その成果はすでに「経営資源と組織能力の測定」(『税経通信』Vol.53 No.12、1998年10月、203-209頁)なる論文で発表済みである。その要約は以下のとおりである。
 経営学とくに戦略論の分野では、企業の競争優位性の源泉として経営資源あるいは組織能力に注目する見方がここ10年の間に支配的な研究パラダイムの1つになっているが、経営資源ならびに組織能力という基礎概念の定義からして研究者の間で合意が形成されているとは言い難い。また、定量的な実証研究もあまり蓄積されていないのが現状である。かかる状況を踏まえたうえで、本年度は定量的な実証研究のための予備的な聞き取り調査を行った。
 そこで明らかになったことは、実務家の人達も経営資源あるいは組織能力なる概念は容易に理解しうるし、その重要性も認めるが、それを定量的に測定するとなると、明確な回答は持ち合わせていないということであった。そうしたなかでひとつの方策として考えられるのは、企業・組織の成果・業績を測定する指標を洗い出すことで、そこから逆に組織能力を類推・測定するということである。あるいは、近年研究代表者の間で注目されている「知識」の概念を手がかりに、組織能力を測定するという方法も考えられる。いずれにせよ、現段階では組織能力を測定する簡便な尺度は存在せず、今後もこの開発に努めることが当該研究分野の発展に寄与するものと思われる。