表題番号:1998A-566 日付:2002/02/25
研究課題日本企業の比較財務情報分析への統計的アプローチ
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 教授 辻 正雄
研究成果概要
本研究では、日本および米国の上場企業における1982年から1997年までの財務データを収集し、データベースを構築し、比較財務諸表分析を行った。日本企業の財務データは日経NEEDSのCD-ROMから、北米企業の財務データはCOMPUSTATのCD-ROMから抽出された。構築された財務データベースを使って、分析対象の企業について、主要な財務指標の値を算出し、それらの基本統計量の値を吟味した。それら基本統計量の中から、平均や標準偏差などについて差の検定を行い、日本と米国の企業のグループ間に統計的な意味での差が存在するか否かを明らかにした。日米間に存在する収益性の格差は、1987年から1990年および91年にかけてやや縮小したものの、日本経済のバブル崩壊後の景気後退期には再び拡大した。平均値の差に関する検定によると、収益性に指標の使用総資本経常利益率および売上高経常利益率において、日本と米国の間には統計的にも有意な差が存在した。その反対に、資本回転率には有意な差は認められなかった。それまで日本が上回っていた固定資産回転率は、1991年以降には米国に逆転されてしまった。日本が全期間を通じて有意であった財務指標は、棚卸回転率であった。収益性における格差に関して、収益性指標を分解して検討していくと、日本企業の売上高原価率の高さに主たる原因があることが判明した。日本企業の高コスト体質が改善されない限り、日米間の収益性格差は縮小されないとの結論を得た。さらに、日本企業を製造業と非製造業とに区分して、収益と費用の関係に関する統計的分析を販売費及び一般管理費に焦点を当てて行った。時系列的な推移を見ると、景気の後退期においても非製造業の費用は上昇を続けてきた。さらには、広告宣伝費および研究開発費は、売上高ならびに営業利益との相関関係が、非製造業においては弱いことが明らかになった。