表題番号:1998A-565 日付:2002/02/25
研究課題社会システムと意味
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 商学部 教授 桜井 洋
研究成果概要
1998年度は「社会システムと意味」と題してモダニティに焦点を当てた社会学の基礎理論研究を行った。現象学的社会学の立場からモダニティを支えるレリヴァンスの構造を、その最も基本的なレベルで考察したものである。本年度の研究は主として文献研究に当てた。すでに久しい以前からモダニティの終焉がポストモダンの標榜という形で論じられてきた。この主張は建築や芸術の領域から始まり、社会理論の領域まで及ぶようになった。
 おりしも情報化の進展によりモダニティの社会システムの核心部分を構成した組織という社会システムがネットワーク状のシステムへと移行しつつあり、そうしたこともこの主張にリアリティを与えていたと考えられる。だがポストモダン的な変容が社会システムのいかなる領域に及ぶものであるかは、慎重な社会学的考察を要するものである。本研究はそうした事情を踏まえて社会システムの自己準拠の構造を、意味概念に焦点をあてつつ探ろうとするものである。本年度は主として文献のリサーチを行ったが、成果の一端として雑誌「情況」の社会学理論特集号(1999年3月)にマルクスに関する社会学的評価の論文を掲載した。初期マルクスの疎外論を中心とする社会システム批判の論点はモダニティの主体の理念を表明しているために、構造的な準拠が強調された昨今では省みられなくなっていた。本論文はマルクスのオリジナリティを初期の論考に求め、その主体のイメージが現代でも有意味であることを述べたものでる。