表題番号:1998A-550
日付:2002/02/25
研究課題脆性―延性遷移領域の断層岩類の構造岩石学的研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
---|---|---|---|
(代表者) | 教育学部 | 教授 | 高木 秀雄 |
- 研究成果概要
- 脆性-延性遷移領域で変形した断層岩類が露出している場として、98年度は愛知県足助地域の調査を行う予定であったが、これまで進めてきた畑川破砕帯(福島県浪江地域小出谷川沿い)の中に、大変重要な露頭を見い出したことから、本年度はこの断層帯の検討を実施した。具体的には、露頭の詳細なスケッチと、ドリルによるコアサンプルの採取およびその偏光顕微鏡ならびにBSE像の観察を実施した。その結果、次の事実が明らかとなった。
1.本露頭は黒色小剪断帯がネットワーク状に発達し、北東―南西走向と北西―南東走向の共役関係の剪断帯が認められる。
2.この共役関係から導かれた最大圧縮応力の方向はほぼ東西である。
3.一部の剪断帯にシュードタキライトが発見された。その産出は、畑川破砕帯で2箇所目のものである。
4.共役関係のどちらの剪断帯にも、カタクレーサイト(シュードタキライト)とウルトラマイロナイト~マイロナイトが密接に伴っている。
5.カタクレーサイトやシュードタキライトが塑性変形を受けて、ウルトラマイロナイト化している部分がある。
6.ウルトラマイロナイトバンドの幅の変化、すなわち変位量の変化が、そのバンドから派生するカタクレーサイトを伴う剪断によって調節されている可能性がある。
以上の産状は、この小剪断帯が、脆性-延性遷移領域(より厳密には破砕-塑性遷移領域)で形成されたことを強く示唆する。その形成環境は、構成鉱物組み合わせから緑色片岩相低温部であると結論される。