表題番号:1998A-548 日付:2008/03/20
研究課題空間の視覚的体験に関するエスノメソドロジー的分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育学部 教授 北澤 裕
研究成果概要
 見ることと見せることを特徴とした社会のビジュアル化やスペクタクル化の進行は、今までの視覚体験の在り方に影響を及ぼしその性質を変化させることになる。これを見ることの原点となる「現実空間の直接的な視覚体験」を取り上げることから分析を開始するというのが、本研究の目的である。その際「エスノメソドロジーでの科学的作業の研究」に関する分析を用いながら、直接的な視覚体験にかかわり合いを持っている行為として、モノや空間を見ることを主要な目的とした「旅行」を具体的な研究対象として取り上げ、モノや空間を「見るという体験行為がいかに行われるのか」を以下の二点に焦点を絞り解明を進めてきた。
 第一点は、旅行者は、自らの旅行というモノと空間を見る視覚的体験行為を、いかにして見る行為そのものとして組み立てて行くのかといった「視覚体験それ自体の構成」の問題である。旅行は何をどのようにすることで、視覚的な体験を行う行為として構成されてゆくのか。その「仕方」と「方法」をエスノメソドロジーでの行為の構成に関する観点から分析した。第二の問題は、旅行という視覚的体験行為の中で、どのように空間が組み立てられて行くのかの「空間の視覚的構成」の問題である。この問題は視覚的体験それ自体の構成と関連しており、部分的にこの視覚的体験の構成に基づいて、旅行者は現実に存在する客観的な物理的空間に、自ら加工を施し視覚的に再構成し表象して行くものと考えられる。この空間の視覚的な再構成の「仕方」や「方法」の特性と変化をエスノメソドロジーの現実構成の分析に依拠しながら探った。
 以上を、社会のビジュアル化やスペクタクル化といった現象を考慮に入れながら、さまざまなの旅行記・探検記・地図・図版を考察することで今後も続けて行くことにしたい。