表題番号:1998A-541 日付:2002/02/25
研究課題縄文時代終末期における土器形式の変化に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 助教授 高橋 龍三郎
研究成果概要
 上記の研究課題を達成する上で、本年度は二つの大きな作業を実施した。一つは故西村正衛教授が昭和30年に発掘した岩手県長谷堂貝塚の土器群の整理であり、他方はその成果に準拠した他遺跡資料の収集と分析である。長谷堂貝塚資料は、お陰さまで精製土器に関してはほぼ整理作業が終了し、実測や写真撮影が完了した。その結果長谷堂貝塚の縄文時代晩期終末期の土器群は、基本的に壷、浅鉢、台付き皿を主として構成され、他にわずかながら甕や注口などが共伴することが判明した。器種構成と文様の系統に関するかぎり、後の弥生時代の共通する性格をもっており、東北地方の弥生式が縄文時代晩期の大洞A・A‘式の伝統の上に成立していることが具体的な資料から予想される。今後弥生最初期の土器群との比較が重要な検討課題である。また本年度の中半から粗製土器の整理作業も開始し、粗製土器の型式区分にしたがって、どのような形態変化を引き起こしているのかについて、並行関係を探っている。これらの作業を通じて、東北地方の縄文時代晩期から弥生時代への変化を探る上で重要な資料を握ることになった。
 これらの整理作業の成果を受けて、岩手県埋蔵文化財センターに出向き、1997年度に同センターで実施した長谷堂貝塚(早稲田の地点とは近距離)の遺物を見学した。その遺物は大洞A‘式を主体として、早稲田の資料より年代的に新しく、一型式のズレがある。型式変化に現れた年代的な変化を知ることが出来たが、同一遺跡での変化だけに重要な資料となる。この他に、盛岡市の川岸場遺跡の土器資料を見学することもでき、岩手県を中心として、東北三県でほぼ類似した変化を遂げていることが予想される。それら研究の成果は、文学研究科紀要に投稿している。また関連論文は全国誌『縄文時代』に投稿した。さらに早稲田大学の学術データベースにも、すでに今までの成果について公表しているが、今年度の成果を含めて、改訂版として追加・補訂し、全国に発信する準備を進めている。