表題番号:1998A-538 日付:2002/02/25
研究課題モンゴル牧畜社会の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 吉田 順一
研究成果概要
 中国内モンゴルの牧畜については、中国各地の図書館に収蔵されている和文図書の調査・収集と文献目録データベースへの登録を行った。中でも呼倫貝爾盟牧畜関係文献については、未見のものをいくつか集めることができた。これらを、これまで収集した文献と合せると、革命前の呼倫貝爾の地域の牧畜について、ある程度研究をまとめる見通しが立ったと考えている。
 モンゴル国側の牧畜については、現地調査を実施し、8月12日から9月4日にかけて、モンゴル国科学アカデミー歴史研究所の招待によって、首都ウランバートルに飛び、そこからモンゴル国東部に位置し内モンゴルに隣接する、ドルノド・アイマグ(県)とスフバータル・アイマグを車でまわり、各アイマグで二つずつのソム(下級行政単位)、合計4ソムを調査した。調査方法は、おもに各ソムの牧民の家に出かけて現地で聞き取りをするというものであり、各ソムの牧民の家の、協同組合(ネグデル)時代とその前後の時期の三つのいずれか、あるいは二つの時期、場合によって三つの時期の牧畜の状況を、季節的移動の問題と乳製品製造方法に主眼を置いて調べ、多くの資料を得た。
 四つのソムのうちドルノド・アイマグのフルンボイル・ソムは、第二次大戦終結時の混乱のさなか、中国の内モンゴル自治区の呼倫貝爾盟のシネバルガ左旗からモンゴル国側に逃亡してきた人々から成るソムであり、その調査によって、革命前のシネバルガ左旗の牧畜状況も含めて資料を得ることができた。これをこれまで収集した文献資料や1995年の現地調査によって得た資料と合せて分析すれば、シネバルガ左旗の革命前の牧畜状況と、その後のモンゴル国側と中国側に分れ住んだそれらバルガ族の牧畜の変化の状況を跡付け、比較対照することができるのではないかと考えている。なお呼倫貝爾盟のシネバルガ左旗からモンゴル国側に逃亡して、ドルノド・アイマグにフルンボイル・ソムを建設するまでの過程をまとめた文献を入手したので、和訳した。