表題番号:1998A-532 日付:2002/02/25
研究課題「早稲田大学シュッツ文庫」の整備・拡充とシュッツ理論の有効性についての研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 那須 壽
研究成果概要
(1) 特定課題研究助成(96B-018)の助成を受けてなされつつあったシュッツ文庫所蔵資料の分類と整理を引き続き行なった。今年度は、H・ワグナーがその書 Alfred Schutz: An Intelectual Biography, The University of Chicago Press, 1983を準備するために収集した膨大な資料の整理を重点的に行ない、さらに新たに本助成によって所蔵資料に加えることができたシュッツの書簡類の点検にも着手した。
(2)ワグナーの資料は、二つの部分からなっている。ひとつはシュッツの手紙や日記、シュッツの知人たちへのインタヴュなどであり、いまひとつは、彼が構想していた先の書物の増補版ともいうべき、三部38章からなる膨大なタイプ原稿である。そのタイプ原稿は、徹底的な調査に基づくシュッツの知的交流と、それが彼の理論形成に及ぼした影響について丹念に検討したものである。ワグナーのそこでの議論は、これまでほとんど知られていなかったシュッツの知的・人的交流にまで言及しながらなされている点から見て、今後さらに検討を加えていくなかで、シュッツの社会理論の新たな側面を明らかにするものとなろう。
(3)それらの資料を検討するなかで、ますますその重要性に気づかされたのが、シュッツが彼の学的生活の最初期からこだわり続けた「レリヴァンス」概念であった。この概念は、研究主体がまた同時に研究客体でもあるがゆえに、体験領域、研究領域の画定について真剣に問わねばならない文化科学にとっては、とりわけ重要である。この点については、近々、「レリヴァンス概念の解明に向けて」と題した論考を公表し、また今年5月にコンスタンツ(ドイツ)で開催される国際会議で "Between the Everyday Life-World and the World of Scientific Theory" と題した研究発表を行なう予定である。