表題番号:1998A-529
日付:2013/04/28
研究課題マイスター・エックハルトにおける「無」の概念について
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 文学部 | 教授 | 田島 照久 |
- 研究成果概要
- エックハルトの『ドイツ語著作集』及び『ラテン語著作集』より「無」に言及されている箇所を抜き出し、検討を加え、存在論的文脈および認識論的文脈に大分し、「無」概念の意味内実の検討と分類とを行った。
その結果 esse 概念の端的な否定としての「無」の概念が被造物の存在(esse)の帰属性に即して語られていることが明確となり、そこに介在する論理の構造も取り出すことが出来た。更に「欠如としての無」の概念内実から、無の克服の方向が、新プラトン主義的「―」(unum)概念の連関においてとらえられていることが資料分析の結果明らかとなった。そしてこのことが無を無化する即ち被造性の克服という救済論的文脈に沿って展開されていることを跡づけた。
以上、「無」概念がエックハルトにおいては超越、欠如、否定といった意味内実で用いられていることを明確にしえたと考えている。