表題番号:1998A-527 日付:2002/02/25
研究課題長期飼育環境におけるラットの採餌行動の弁別学習に関する実験的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学部 教授 木村 裕
研究成果概要
 ラットの通常の飼育用ケージ(横26×奥38×高18cm)は一般的に用いられているが、その中でのラットの行動は大きく制限を受けていると考えられる。このため、飼育ケージ以外の、行動変容過程を分析するための実験条件下における分析すべき行動は何らかの影響を受けていることを考察してみる必要があると考えた。このことから「長期飼育実験箱」(横90×奥65×高110cm、高55cmに横60cmの板を張り、上部をフリーオペラント領域、下部を木屑を入れた巣部とし、一端30cmを上下の出入口とした)を準備し、飼育条件と行動の分析条件とを分離することなく維持しながら行動の変容過程をとらえることを計画した。当報告は、より自然に近い生活条件下におけるラットの摂食と摂水に関して、その最も基礎となるべき量と時間を日を追って記録したものである。被験体として10週齢のラットを用いた。明期(8:00-20:00hr,12時間)と暗期(20:00-8:00hr,12時間)を設け、明期には95Wの白色灯と100Wの赤色灯を、暗期には100Wの赤色灯のみを照明として用いた。第一ステージ(17日)では、常時飼料と水が、上部フリーオペラント領域の上下出入口とは反対の壁に設置されてあり、ラットは任意の摂食摂水が可能であった。第二ステージ(17日)では、レバーを導入し、ラットが押すたびに粒餌を一粒提示した。両ステージにおいて摂食摂水のそれぞれの総量に変化は無かったが、レバー押し課題を導入した第二ステージではいずれも日毎の摂取量の分散が大きくなった(摂食SD4.35g→13.22g、摂水SD4.66g→13.44g)。両ステージにおけるラットの行動はビデオ装置で初期(1-3日)、中期(8-10日)、後期(15-17日)において記録し、再生によって分析した。第一ステージでの一回の摂取時間は、摂食については初期385秒(総時間4,200秒)、中期504秒(4,550秒)、後期404秒(4,450秒)、摂水については31秒(200秒)、94秒(1,150秒)、90秒(1,100秒)であった。第二ステージにおける一日平均のレバー押し回数は715.36回、摂水(リッキング)回数は592.69回であった。