表題番号:1998A-526
日付:2002/02/25
研究課題アイヌ民族史の研究(4)
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 文学部 | 教授 | 菊池 徹夫 |
- 研究成果概要
- 98年度は、95年度の特定課題「アイヌ民族史の研究(1)」で提示した基本戦略に基づきつつ、96年度の研究(2)でのオホーツク文化、97年度の研究(3)における擦文文化に関する研究を踏まえ、これら両土器文化と、いよいよそののち列島北部に立ち現れる、いわゆるアイヌ文化との系統関係についての研究にとりくんだ。
基本的には、考古学的データに拠りつつ旧石器時代以降、続縄文期を経てオホーツク文化・擦文文化を中心に近世アイヌ文化期まで時代を下り、いっぽう、文献に拠りつつ、逆に近世から中世を経て古代蝦夷世界へと遡行してみた。もちろん、言語、民族、地理、人類学など、関連諸学の成果も吟味した。
その結果については下記文献のほか、別の機会にゆずり(放送大学99年度テキストその他)、ここでは詳述を避けるが、いずれにせよ、最後の土器文化たる擦文文化が終焉を迎える13世紀から、確かな文献資料の現れる15世紀までの間、即ち、14世紀を中心とする時代こそがこの北日本の地域では、史料的にいわば暗黒の時代であること、しかし、にもかかわらず最近ようやく懸命の調査・研究の進展によって、こうしたヒアタスを埋め、中世北日本の姿を垣間見せてくれるような考古資料が明らかにされ始めていることは確実である。それによって、ようやくアイヌ民族の形成や、いわゆる近世アイヌ文化の成立の問題について、ある程度説得性をもつ仮説を提出できる段階になったといっていよい。
かかる研究を可能ならしめた本助成費の交付に対し、深甚の謝意を表する。