表題番号:1998A-512 日付:2002/02/25
研究課題近代政治論に対する古典的軍事論の寄与──東西の比較思想史的考察に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 笹倉 秀夫
研究成果概要
 本研究の課題は、近代政治学の形成に古典的軍事論研究が本質的に寄与したという事実を西洋史および東洋史に即して明らかにし,そのインプリケーションを考えることにある。
 研究は、重点を東洋の軍事・政治思想の分析に置き、孫子をはじめとする中国の古典的兵法の分析、およびそれが当時の荀子や韓非子らの法・政治思想と対比してどういう特徴をもっているかの考察から始め、さらに日本近世における軍事思想との比較、江戸時代における、孫子や荀子、韓非子の受容の態様(とりわけ荻生徂徠の思想が重要である)を明らかにし、それらを連関付けることによって古代軍事思想と近世政治思想の関係についての考察を進めることをめざした。なかでも集中して行ったのは、武家の家訓書や『甲陽軍鑑』をはじめとする軍事・政治思想書の分析と、荻生徂徠の『孫子国字解』がかれの政治思想の形成上に有した意味に関する考察であった。この考察を通じて、近世における政治的思考が軍事的思考の独自な展開上に発達したものであることが日本についてもいえることを確認した。