表題番号:1998A-511 日付:2002/02/25
研究課題金融システムの崩壊とその処理に関する総合的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学部 教授 近江 幸治
研究成果概要
 日本経済史上類を見ない深刻なバブル経済とその崩壊は、法律面においても、さまざまな重大な問題を提起した。この問題を、私は、特に金融取引制度の観点から資料を基に整理し、それを基礎として、1つは、金融取引に関する政府の政策的問題という観点から、もう1つは、第二次大戦前において世界的な金融恐慌の波を受けたいわゆる「昭和恐慌」との類似点との比較という観点から、それぞれ観察してきた。
 第1の点については、金融取引に関して、現在は市場原理が極端なまでに叫ばれ、その結果として「金融」問題をすべて市場原理に任せようとする思潮が席巻している。しかし、市場原理は、競争以外の何者でもなく、それによって必ず敗者が市場外に放出される結果をもたらすことを意味する。このような敗者に対する十分な手当なくして市場原理に全面的に依存することはできないはずである。かといって、市場原理に対する制動を働かせること自体、かつての失敗を歩むことになる。そこで必要とされるのは、政府の成功と市場の成功という第3の道を模索することである。
 第2の点については、「昭和恐慌」は、その崩壊の度合いが、現在のバブルよりも鋭く、単純には比較できないが、しかし、その原因と対応とはきわめて類似的であることがわかった。そこで、当時の対応策を比較的に検討することは、十分に意義のあることである。ただし、当時の処理策は当時の経済政策(経済理論)を背景としていることから、やはり“単純”な比較ができないことはいうまでもない。
 以上の研究の結果として、当初予定していた一定の結論を得ることができた。