表題番号:1998A-509 日付:2002/02/25
研究課題貨幣金融制度と経済発展:理論的分析および明治初期日本と19世紀米国の比較分析
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学部 教授 藪下 史郎
研究成果概要
 本研究は、これまでの研究(不完全情報と金融システム)の延長線上にあり、イェール大学での在外研究(1998年度)を基礎に始めたものである。本年度には、早稲田大学(10月、2月)や青森公立大学(8月)などで研究会を行い、大学また学部内のみならず外部の研究者と意見を交換することができた。こうした研究をもとに次のような論文をまとめた。
 (1) 「経済成長と貨幣金融制度に関する一考察」。(2) 「貨幣制度、金融革新、および内生的経済成長」。(3) 「金融革新と内生的経済成長」。(4) 「アメリカの貨幣制度の発展」。(5) 「経済活動と制度」(早稲田大学・金融研究会発表論文、2月)。
 これらの論文では、主として制度・貨幣金融制度が経済活動また経済成長にどのように関連し、どのような影響を及ぼすかを理論的に分析してきた。(1)(2)(3)の論文においては、これまでの新古典派経済学では「制度」というものが重要な役割を果していなかったが、実際には貨幣金融制度が経済成長などに大きな影響を及ぼすということを指摘し、かつそれを取り入れた理論モデルを構築し分析した。(4)の論文は、19世紀におけるアメリカでの貨幣制度の発展を歴史的に考察し、そこでの特徴などを指摘した。(5)の論文においては、新制度経済学の観点を考慮しながら、「制度とは何か」「なぜ制度が重要か」などに関わる理論的分析を整理し、かつそれらが金融制度および政治制度においてはどのような問題が生じるかを考察した。本論文については、今後、一般的理論分析をより詳細に考察しまとめる予定である。またその応用として政治制度・金融制度の諸問題をさらに検討してみたい。