表題番号:1998A-185 日付:2002/03/14
研究課題マルチキャスト通信網の最適網トポロジー
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際情報通信研究センター 教授 田中 良明
研究成果概要
 広帯域サービス総合ディジタル網(B-ISDN)が実現されると、従来の電話、ファクシミリ、データ通信などのような1対1通信サービスの他に、各種マルチキャスト通信サービスが普及すると言われている。マルチキャスト通信では、同じ情報を2箇所以上の目的地に伝送する場合、途中までの経路が同じであれば、そこまでは一つの情報を伝送し、分岐点にて複製を作成する。これにより、伝送路のトラヒックを大幅に減少させることができ、全体としての網資源の節約、伝送コストの低減が可能となる。しかし、マルチキャスト接続という形態は、従来の1対1接続とは大きく異なるものであり、従来どおりの網トポロジーではサービスの品質劣化や網構成にかかるコストが増大する恐れがある。
 本研究では、マルチキャスト通信サービスと1対1通信サービスが混在する場合を想定した最適トポロジーの検討を行った。まず、あらかじめ基本網形態を定めた上で、その中で最も適しているものを探索するという手法を用いた。次に、ヒューリスティックアルゴリズムを用いて、網トポロジーの最適化を行うという手法を用いた。
 具体的には、全国を覆う広範囲な通信網の階層構成の一部をなす小エリアにおいて、交換局集合、その交換局を接続する敷設網、その地域で通信網に加入している加入者集合が与えられる。このとき、交換局間のトラヒック条件を満たす網のなかで、物理網の構成コストを最小にするような網構成をヒューリスティックアルゴリズムにより最適化した。ヒューリスティックアルゴリズムとしては、グリーディ及び焼きなまし法を用いた。その結果、あらかじめ基本網形態を定めた場合と比べて、よりコストの低い網を設計することができた。また、全国の網を現在の1対1通信の網からマルチキャスト通信網へ移行する場合の網増設法についても検討を行った。