表題番号:1998A-176
日付:2004/03/31
研究課題ベータ崩壊半大局的理論のr過程元素合成および崩壊熱への応用
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
---|---|---|---|
(代表者) | 高等学院 | 教諭 | 橘 孝博 |
- 研究成果概要
- 最近の原子核研究で強い関心が持たれている不安定原子核に対しては、未発見または発見されていても各種の実験データ不足の核が数多くある。我々は原子核の基礎的なデータを推定する方法として、ベータ崩壊強度関数を与える理論(大局的理論と半大局的理論)および質量公式を研究してきた。本年度の特定課題研究の成果は、主に以下の2つの国際会議で発表した。
(1)国際会議 ENAM98(ミシガン州, AIP, CP455,p.805):現在、遅発中性子放出の実験値は主に核分裂生成核種が中心であるという片寄った状況ではあるが、半大局的理論での推定値がこれらの実験値を、平均的に過小評価していることが分かった。これを改良するために理論で計算された強度関数を各エネルギーで広げて、全エネルギー領域で積分したものを新しい強度関数として用いた。拡げる時に用いる関数の幅はエネルギーに依存させ、娘核の基底状態ではデルタ関数となるように工夫したので、半減期に対してはこれまでの推定値から大きな変更はない。これで遅発中性子放出確率は改良されたが、その効果はまだ十分ではない。今後これをr過程元素合成のデータとなるように精度を高めていく。
(2)原子核国際会議98(パリ):中性子瞬時照射後の核分裂崩壊熱の研究において、239Pu など多くの核で、照射後約千秒で総和計算値が測定値を系統的に下回る。その原因を調査するために、総和計算に使われる実験値等を考慮しながら、この時間領域で有効な核種を同定し考察した。われわれの大局的理論を援用した結果、104Tc と 105Tc に対してベータ強度関数の実験値が少なく測定されている可能性があるという結論を得た。これは、名古屋大学、日本原子力研究所、武蔵工大、カダラッシュ研究所(フランス)との共同研究となった。
また質量公式に関しては、名古屋大学エネルギー理工学グループとの共同論文で我々の質量公式の検証も行った。