表題番号:1998A-165 日付:2002/02/25
研究課題インターネット時代のからだと健康問題
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学部 助教授 中村 好男
研究成果概要
 情報化時代の入り口であった20世紀の後半、私たち人類は合理化・競争化・省力化といった様々な環境変化にさらされ、様々な適応を果たした。そのような適応のうちの「省力化」だけに注目して「運動不足病」という概念が提案され、それは体育学者の主要な研究テーマの一つとなった。殊に運動生理学は、「運動不足」がもたらす様々な弊害とそれに対する処方としての身体活動の効果をみごとに例証してきた。しかし、<インターネット>の普及にともなう本格的な情報化時代への突入を控え、「合理化・競争化」といった情報化社会の本質的要素までをも総合した視座によって身体の適応を探求する必要がある。
 本研究ではこれまでの「身体観」ならびに「身体とメディアの関わり」について広範な文献資料を踏まえた上で、日常生活におけるインターネットへの依存が精神情緒機能に生理的影響を及ぼすだけでなく、コンピュータネットワークという新たななぞらえの出現によって人々の抱く身体観が大きく変わるということを示したうえで、そこでは<皮膚>という身体の境界が揺らぎ始め、コンピュータ配線を含めた新たな<神経系>の存在を認識し出す可能性があることを論じた。このような論考を踏まえて、本研究では以下のような「インターネット時代の身体と健康問題」へのアプローチを提言した。
 1.拡張された身体についての生理学的説明。
 2.インターネットがもたらす新たな「なぞらえ」の模索。
 3.20世紀後半の健康増進ムーブメントの再評価。
 4.インターネットに依存する身体の想像。