表題番号:1998A-160 日付:2002/02/25
研究課題汪兆銘政権内の日本人顧問に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 助教授 劉 傑
研究成果概要
近年、私が取り組んでいる研究課題の一つに、いわゆる「中国通」「日本通」の人々を通して、日本と中国の近現代史、及び近代日中関係史を見直す、というものがある。昭和戦前期に日中関係はさまざまな側面を持っている。しかし、従来の研究は、主として両国の相敵対する側面が多く強調され、水面下における両国の人的交流や、戦争と並行して展開された、両国関係再構築の試みなどは、ほとんど無視されてきた。ところが、私は、戦後日中貿易や日中国交回復に活躍した人々の多くは、戦前、中国大陸に赴き、各分野で活躍し、中国において幅広く人脈を築いた人々であることに注目し、戦前と戦後の「連続」の視点から、近代の日中関係を再検討しようとしたのである。それでは、「中国通」「日本通」と言われた人々は、どのような理念に基づいて、日中両国で活躍したのか、どのような日中関係ないし国際関係を構築しようとしたのか。これを解明するために、私はこれまで一連の論文を執筆してきた。しかし、これまでの研究は、汪兆銘政権と日本との関係についてほとんど言及していない。日中戦争の最中に成立した汪兆銘政権のなかにも多くの日本人顧問が配置された。これらの人々の思想と行動は、汪兆銘政権が「傀儡政権」だったということで、研究の対象とされていない。同政権内の顧問は日本を代表する政界、経済界及び学界の人々であり、彼らの行動を究明することは、日中関係史の研究にとって重要な意味をもっていることは、いうまでもない。1998年度は、汪兆銘政権下で活躍した日中双方の人物を取り上げ、研究を進めてきたが、その成果として、「日中戦争下の親日派」をまとめ上げた。この問題をさらに大きな視野で取り上げる著書を現在執筆中である。