表題番号:1998A-153 日付:2004/04/01
研究課題行政視察問題へ適用可能な問題解決ツールの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 社会科学部 教授 常田 稔
研究成果概要
 地方自治体における行政視察は、他自治体の先進事例を調査してその成功要因を学び自治体の政策策定に役立てようとする活動であるが、多くの場合伝統と慣習に頼り合理的な方法論に基づいているとは言いがたい。
 そこで、本研究では、最初に実務担当者を対象とするインタビュー・アンケート調査を実施した。そこから、行政視察における問題点を抽出し、実務家が伝統と慣習に頼る原因を明らかにした。また、行政視察は政策形成的視察と政策研究的視察の2つのタイプに類型化でき、これらのタイプごとに異なるアプローチが必要であることを明らかにした。
 以上を前提として、私企業で活用されているベンチマーキング手法を行政体に適用可能なものに改良することを試みた。先ず、地方自治体の視察活動における行政型ベンチマーキングのコンセプト・フレームを構築した。これは、私企業の活動では当然である利益最大化という目標を想定しえない自治体の活動において立脚すべきベンチマーキングの概念基盤を提示したものである。次いで、地方自治体における政策形成的視察・政策研究的視察のそれぞれに対応する行政型ベンチマーキング・プロセス・モデルを開発した。これは、視察活動全体をベンチマーキングに基づく問題解決過程と見做し、その過程をいくつかのフェーズに分割し、それぞれのフェーズにおける活動要素を具体的に同定したものである。最後に、プロセス・モデルにおけるそれぞれのフェーズ毎のキー・マップを作成した。これは、ベンチマーキング・プロセスの各フェーズにおいて、達成すべき目的、なすべき作業、注意すべき留意点、アウトプットすべき結果のフォーマットを具体的に指定したものである。
 ここで開発されたものは、非構造的な問題に対して、問題をそれ自体ではなく、問題の解決過程を構造化して解決の支援を行うツールである。